No.282 現場で信頼される介護士の一日のスケジュールと立ち回り
介護士の仕事は、利用者の日常生活を支えると同時に、心に寄り添い、尊厳を守る重要な役割を担っています。しかし、その実態は表面からは見えにくく、体力・気力ともに求められる責任の大きい仕事でもあります。介護施設では24時間体制でケアが行われており、介護士はシフトに応じて多様な時間帯で働いています。本記事では、日勤帯を中心に介護士の一日のスケジュールを追いながら、現場でどのように立ち回っているのかを具体的に解説していきます。
朝は申し送りから始まる情報共有の時間
介護士の一日は、夜勤スタッフからの「申し送り」を受け取るところから始まります。ここでは、利用者の夜間の様子や体調変化、急変や転倒などの有無、朝の状態について詳細に共有されます。この情報を正しく把握しないと、その日の支援が的確に行えなくなってしまうため、非常に重要な時間です。気になる点があれば、その場で質問したり、カルテや記録を確認したりする姿勢も大切です。情報を「受け取る」だけでなく、「理解する」ことが現場では求められます。
起床介助と朝の整容支援で一日を整える
申し送りが終わると、いよいよ利用者の起床支援に入ります。「おはようございます」と声をかけながら、ゆっくりとベッドから起き上がるサポートをし、トイレ誘導やおむつ交換、洗顔・整髪といった朝の身支度を行います。この時に注意すべきは、体調のちょっとした変化に気づけるかどうかです。たとえば、いつもより反応が鈍い、ふらつきがある、顔色が優れないなどの異変は、早期発見につながります。支援しながらも常に観察の目を持つことが、介護士にとっての基本姿勢です。
朝食と服薬支援では“見守り”の力が問われる
朝の準備が終わると、食堂への誘導や配膳、食事介助が始まります。ここでは食欲や嚥下の様子、薬の飲み忘れがないかなどを細かくチェックします。利用者によっては自立して食べられる方もいますが、誤嚥や脱水のリスクがあるため、ただ“食べる姿”を見ているだけでは不十分です。また、服薬時には薬を嫌がる方、飲み込みにくい方もおり、時には声かけや水分補給などの工夫が必要になります。この時間帯は静かな観察力が求められる瞬間です。
午前の活動時間は心と身体のケアの時間
朝食後は口腔ケアと排泄支援を行い、午前中の活動時間に入ります。体操や塗り絵、簡単なゲーム、散歩など、心身の活性化を目的としたレクリエーションが行われ、介護士は進行役や補助として関わります。利用者の中には活動に消極的な方もいるため、強制ではなく「その人らしい参加の形」を尊重しながら関わることが大切です。また、この時間に入浴が予定されている場合は、安全面に細心の注意を払いながら、衣類の着脱、洗体、洗髪、保湿など多くの工程を手際よく支援する必要があります。
昼食と休憩、午後への切り替えのひととき
昼食前には再度のトイレ誘導や手洗い支援を行い、食事介助に入ります。午前中の疲れが出てくる時間帯でもあるため、利用者の集中力や体調の波に配慮した対応が求められます。食後には口腔ケアと排泄支援が続き、ひと段落すると、介護士自身の休憩時間になります。ただし、緊急対応が入った場合や職員の交代が難しい状況では、予定どおりに休めないこともあり、柔軟な対応が求められます。
午後は入浴・排泄・更衣支援で慌ただしく
午後になると、再び入浴支援やおやつ提供、排泄ケア、必要に応じた更衣支援などが行われます。特に午後の入浴は高齢者にとって体力を消耗するため、無理のないスケジュール調整と丁寧な声かけが不可欠です。おやつの時間は、利用者の気分を和らげるコミュニケーションの機会でもあります。一見のんびりした時間にも、嚥下確認や情緒の観察が伴います。午後は活動の内容も増えるため、タイムマネジメント力が問われる時間帯です。
夕方の支援と夜勤スタッフへの引き継ぎ
夕方には再度排泄誘導を行い、夕食への準備を進めます。夕食後は就寝前の整容や更衣を支援し、利用者が安心して一日を終えられるよう丁寧に対応します。その後、夜勤スタッフへの申し送りを行い、日中の変化や注意点を的確に共有します。申し送りでは、些細な情報でも漏らさず伝えることが、夜間の安全と安心を守ることにつながります。この引き継ぎを終えて、ようやく介護士の一日が終了します。






