No.285 介護士に必要な、メンタルの整え方と心のセルフケア
介護士として働く現場は、身体的な負担だけでなく、精神的なストレスも多く抱える環境です。利用者との関わり、家族への対応、職場の人間関係、終末期ケアへの葛藤――そのひとつひとつが、介護士の心に少しずつ積み重なっていきます。だからこそ、「心の健康」を保つことは、長く働くための重要な要素です。本記事では、介護士が抱えやすいメンタル面の悩みとその対処法、そして毎日を前向きに乗り越えるためのセルフケアのヒントを丁寧に解説します。
「感情を押し殺す」日常の中で蓄積するストレス
介護士は、どんなに忙しくても、つらいことがあっても、常に笑顔で利用者に接することが求められます。ときには理不尽な態度をとられたり、暴言・暴力的な対応を受けることもありますが、「仕事だから」と割り切り、感情を飲み込んでしまう場面も少なくありません。
また、利用者の死や別れを経験する中で、深い喪失感を抱きながらも、それを表に出せず次の業務に取りかからなければならないという現実があります。このように、感情の起伏に蓋をして働く日常は、知らず知らずのうちに心に負荷をかけていきます。
「誰にも相談できない」がメンタル不調のはじまりに
職場では、周囲のスタッフも同じように忙しく、「話を聞いてもらう余裕なんてない」と感じてしまうことがあります。新人の場合は「こんなことで悩んでいると思われたくない」、中堅の場合は「弱音を吐けない立場だから」と感じてしまい、誰にも相談できず孤立してしまうことも。
こうした状況が続くと、気づかないうちに「仕事に行きたくない」「何もしたくない」「怒られている気がする」などの感情が強まり、メンタル不調につながってしまいます。自分が「ちょっと変だな」と感じたタイミングで、声をあげることがとても大切です。
終末期ケアと向き合うことで生まれる心の疲労
介護現場では、利用者の死を日常的に経験することがあります。看取りケアに関わった際、「もっとできたことがあったのではないか」「最後にちゃんと声をかけられたか」と自責の念にかられることもあります。
また、長く関わってきた利用者が亡くなると、大きな喪失感を覚えるだけでなく、「次の利用者のケアにすぐ戻らなければならない」という現場のスピード感とのギャップに、感情が追いつかなくなることもあります。人に寄り添う仕事だからこそ、心にも「余白」を持つことが大切なのです。
人間関係のストレスも大きな要因に
介護の仕事はチームで成り立つため、スタッフ同士の人間関係も大きな影響を与えます。「あの人には相談しづらい」「報告しただけで否定された」といった小さなコミュニケーションのズレが、積もることでストレスになります。
特に新人や中途採用の職員にとっては、職場に馴染むことそのものがプレッシャーになることもあります。上司や先輩の対応が冷たく感じたり、周囲の雑談に入れなかったりすると、「自分だけ浮いている」と感じてメンタルが揺らぎやすくなります。
職場全体で“心の健康”を支える風土づくりを
介護士のメンタルヘルスを守るためには、職場側の姿勢も非常に重要です。定期的な面談や、気軽に相談できる窓口の設置、上司からのこまめな声かけなど、心理的安全性のある職場環境づくりが、スタッフの心を守ります。
「つらい」と言える職場こそ、長く働き続けられる環境です。個人の努力だけでなく、チーム全体で“支える人”を支える体制を整えていくことが、介護の質向上にもつながります。






