No.278 介護士として知っておきたい保険の基礎知識

介護現場で働く介護士にとって、仕事中のけがや体調不良、将来の生活の備えなど、さまざまなリスクに備える制度が「保険」です。保険というと難しく感じる人も多いかもしれませんが、働く人の権利として当然のように守られている制度でもあります。本記事では、介護士が押さえておくべき社会保険や労働保険、民間保険の基礎知識を分かりやすく解説し、安心して長く働くためのヒントをお届けします。
介護士も加入する社会保険とは何か

介護士としてフルタイムや一定の条件を満たすパートタイムで働いている場合、「社会保険」に加入しているのが一般的です。社会保険とは、健康保険、厚生年金保険、介護保険、雇用保険などを総称した制度で、病気や失業、老後の生活など、人生のさまざまな場面で私たちを守ってくれる仕組みです。
たとえば、健康保険に加入していれば、医療機関での受診費用が3割負担になり、高額医療費制度などの支援も受けられます。また、厚生年金に加入していれば、将来的に受け取る年金額が国民年金よりも多くなります。介護の仕事は体力的にも負担が大きく、けがや病気のリスクも少なくありません。だからこそ、保険の仕組みを正しく理解し、必要なサポートを受けられる状態にしておくことが大切です。
労災保険と雇用保険

介護士が働く中で特に重要なのが、「労災保険」です。これは、業務中や通勤中のけが・病気・障害・死亡に対して、治療費や休業補償、障害補償などが支払われる制度です。たとえば、入浴介助中に腰を痛めた、利用者の転倒を防ごうとして自分が負傷した、通勤途中に事故に遭ったといった場合に、労災保険が適用されます。
もう一つの「雇用保険」は、失業したときに一定期間給付金を受け取るための制度です。また、育児休業給付金や介護休業給付金など、ライフステージに応じた支援も受けることができます。介護士の中には、結婚・出産・育児・介護といった生活の変化に直面する方も多くいます。そんな時こそ、公的制度の活用が重要になります。雇用保険に加入していることで、キャリアを途切れさせずにライフプランを描くことが可能になるのです。
パートや派遣でも保険に入れる?
「私はパート勤務だから保険は関係ない」と思っている人も多いかもしれませんが、実際はそうではありません。一定の労働時間と収入があれば、パートや派遣でも社会保険の対象になる場合があります。具体的には、週20時間以上働き、月額賃金88,000円以上(目安)、1年以上の雇用見込みがあり、勤務先の従業員数が一定規模以上であれば、社会保険への加入が義務づけられるケースが増えています。
近年では「パートでも安心して働きたい」というニーズに応えるため、福利厚生の充実を図る介護施設も増えてきました。保険に加入することで、けがや病気の際の経済的リスクを減らすことができるだけでなく、将来的に受け取る年金額にも影響を与えるため、キャリアを考えるうえでも重要な判断ポイントになります。